失敗を振り返り、教訓を学ぶプロセスは、成長と発展に不可欠です。それは、どの年齢・職種においても共通しています。学生や部下、特に先生やリーダーにとって、セルフリフレクション(自己評価)を行うことは精神的にも霊性的にも成長をもたらしてくれます。

ですが、実際にどれくらいの人が「振り返り」の時間を持てているのでしょうか?そのプロセスは決して簡単なものではありません。多くの人はスローで時間の無駄に見える「振り返り」のプロセスを好まないでしょう。ある人は過去を振り返りたくないというかもしれません。それは自分の欠点と向き合うことよりも、強みを見つける方がよっぽど楽だからです。受け身になるのではなく、自分の欠点を認め、ポジティブな姿勢でその教訓を学びましょう。それによって自分を変えることができ、幸せを呼びこむことにもつながります。私たち人間は、自分の弱みを裁いてネガティブになったとしても、「成長できる」とポジティブになるよう考え方を切り替え、チャンスを作り出していく力を持っているのです。

1888年7月ヘレン・ケラー、アン・サリバン先生とともに

特に先生・教師にとって、「振り返り」が生徒を正しい方向に導く重要なカギであるといえます。良い先生とは、「振り返り」が上手な人であり、良いリーダーです。視覚障害と聴覚障害の両方を持つ重複障がい者であるヘレン・ケラーの家庭教師を、わずか20歳という若さから担当したアン・サリバン先生は、当時まだ若かったにもかかわらず、とても明るく志の高い教師でした。ヘレン・ケラーは視覚・聴覚障がい者では初めて文学士の称号を獲得し、作家として、世界的に有名な演説者、そして政治活動家としても名を広めた人物です。ヘレンは頑固で気難しい子供でしたが、サリバン先生の「振り返る」プロセスが大きく貢献し、ヘレンの人生を成功へと導きました。

サリバン先生自身も視覚障害がありましたが、その強い決意と高い自己評価能力によって、困難で気の遠くなるような子供の世話を乗り越えることができたのです。サリバン先生は当時、教えながら得た経験から重要な出来事を書き出し、自己評価として友人に手紙を出しています。

サリバン先生は、ヘレンが名詞の「マグカップ」や「ミルク」をしばしば動詞の「飲む」と混同してしまい、理解に苦しんでいるのを見て、どうすればうまく理解させられるか悩んでいました。ヘレンは「飲む」という言葉を知らないはずなのに、「マグカップ」や「ミルク」のつづりを示しながら「飲む」動作を行ってしまうのです。

そこでサリバン先生は、手話の概念と実際の物事を結びつけるようにしました。ヘレンを目の前の物に片手で触らせながら、もう片方の手にその物の名前を手話で教えるという方法です。

ブロードウェイ「ミラクル・ワーカー (The Miracle Worker)」の舞台でアン・サリバン先生役をアン・バンクロフトが、ヘレン・ケラー役をパティー・デュークが演じている様子。このシーンではサリバン先生がヘレンに「水」の意味を教えようとしている。

「私たちは井戸に一緒に行き、私がポンプを漕いでヘレンに蛇口の下でマグカップを持たせました。冷たい水が蛇口から噴き出しマグカップがいっぱいになったとき、わたしは『w-a-t-e-r(水)』とヘレンの空いた手に教えてあげたのです。言葉を教えたとたんに冷たい水がヘレンの手に流れたので、ヘレンはびっくりしてマグカップを落としてしまい、その場に立ちすくんでしまいました。ヘレンの顔に新しいことを学んだ喜びが表れていました。」

これがきっかけとなり、サリバン先生と他の教師の教育は、ヘレンに点字の使い方を教えたり周りの世界とのコミュニケーション方法を教えられるほど、飛躍的に前進しました。それは簡単なことではなく、生徒も先生も多くの壁や葛藤と向き合わなければなりませんでした。しかしサリバン先生もヘレンも頑固に突っ走ったり諦めてしまう代わりに、繰り返し「振り返る」ことに時間を費やしました。これは意識と決断力が必要な行動ですが、同時に学びを可能にする行動です。一見「のろま」に見えてしまっても、長い目で見ればより早く効果的に前進できる方法であり、くじけて涙を流すことも少ないということです。

「ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)」というアメリカのグローバル・マネジメント誌によると、一日の終わりに15分間「振り返り」の時間を持つ人は、振り返らない人に比べて10日間で23%もパフォーマンスが高かったと伝えています。またイギリスの通勤者に関する研究では、通退勤中にその日のことを考えたり、計画を立てたりする人は「何も考えない人より幸福で、創造的であり、疲労が少ない」ことが分かりました。

簡単に言うと「振り返り」は、毎日の忙しい生活を一時停止させ、分類し、認識し、その日の経験に意味を見出すことです。「振り返り」を行う時間や場所は人それぞれですが、自身のライフスタイルを振り返る方法は数えきれないほどあります。それは日記かもしれませんし、通勤中の車で考えること、あるいは最高の教室である自然の中に行くことかもしれません。

皆さんは「振り返り」の時間をもっているでしょうか。振り返っていないという人は、今日から始めてみては?